2012年4月10日火曜日

ウェイトリフティングのテクニックは何年にも渡って進化してきた


 

ウェイトリフティングのテクニックにおける最も重要な要素 パート1

 

ウェイトリフティングのテクニックは何年にも渡って進化してきた。進化とは生体力学的な効率の改善である。バーの下へ体を移動させる際、上肢を使ってバーを引くことから、下肢へと重点を変える方法が用いられるようになり、スナッチやクリーンアンドジャークにおいて、力を調和させて分配するようになった。

 

バーの下へもぐる時に用いられていたスプリットは、スクワットスタイルに取って代わられた。なぜなら、スクワットスタイルのほうがより深くしゃがむことができるし、求められる力はスプリットの半分の力で済む。

 

ウェイトリフティングテクニックにおける進化は、競技ルールの変更と深い関わりがある。プレス種目がなくなったことで「弾性的な鉄人」が出てきた。特に新しくはないが、このタイプのリフターはそれまでのチャンピオンに代わって今日のチャンピオンの原型になったと言える。今日では、瞬発力、筋収縮の速さ、動作の速さ、弾性、関節の可動域等を活かして、40年前には考えられなかったほどの高重量を挙げる選手が出てきた。絶対的な力の時代にチャンピオンになったPaulAnderson などは、可動域やスピードに欠ける為、今日チャンピオンになれる可能性はほとんどないであろう。

 

ここ60年に渡るロシアの研究によれば、3種目のトータルや各種目の記録の伸びに関して多くの特性があることが分かった。例えば昔、プレスに悪影響があるとされるトレーニングをしてスナッチ・クリーンアンドジャークの記録を伸ばした若い選手がいた。彼は、クリーンアンドジャークやスナッチの為に犠牲を払ったのである。

 

こういった研究によって、プレス重量の向上が、挙上速度に与える影響が明らかになった。「プレスとスナッチは反比例の関係にあることが判明した。スナッチ重量の向上はプレス重量の下落によってもたらされる。逆も成り立つ。」「ごく最近まで、ウェイトリフティングの練習においてはより大きな重量を扱うべきであるという考えが一般的であった。これは、力の向上には役立ったが、スピードを下げてしまった。つまり、挙上速度に悪影響を与えるのである。」

 

ウェイトリフティングのトレーニングは技術の練習だと言われてきた。これは、重量や種目の選択の偏りが悪影響をもたらすのと同様に、物理学的な質も、パフォーマンスに悪影響を与えうるという考えから来ている。

 

「ウェイトリフティングにおいて、技術は力を表現する"方法"である」

 

 

プレスの廃止や、クリーンアンドジャーク・スナッチにおけるディープスクワットの出現によって、"ストレングス"が持つ役割は減少し、代わりに、クイックリフトと呼ばれる、最大重量を速く挙げるための"スピードストレングス"の役割が大きくなった。したがって、スピードストレングスの向上がリフターの至上命題なのである。

 

〜 ウェイトリフティングの特性とアスリートの限界との関係 〜

 

人間が、大きな筋力を、素早く、複雑なコーディネーションとともに生み出すには、いわゆる「反発力」を、無意識のうちに使えることが必要である。この力を利用する為には、体の先天的なメカニズムに頼らねばならない。スナッチやクリーンアンドジャークにおいて、バーベルに与える力のスピード、体が動くスピードは、意識的に発揮できるものではない。

 

例えば機械が、意識的には行えない程速い動きを行えるように、最大重量をスナッチ・クリーンアンドジャークする時のコーディネーションは、自動的である必要があるのだ。最大重量の挙上において、リフターは、筋群の素早い切替だけでなく、例えば収縮性から伸張性へ、という様に、筋収縮タイプの切替も行わねばならない。挙上時における筋収縮のスピード、体や個々の関節が動くスピードは、意識して速くできるものではないのだ。

 

Vorobeyev によれば、「ウェイトリフティングの特性はその瞬間性であり、動作を意識的に調整するのは非常に難しく、ほとんど不可能である。」また、N.A.Bernstein の意見では、「無意識下のほうがエラーが少なく、制御のレベルが、神経レベルにまで低下する」とのことである。

 


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したがって、スナッチやクリーンアンドジャークにおいて、最大重量を挙げている最中にその挙げ方を考えるのは現実的ではない。これは、挙上時間が一秒にも満たないことを考えれば明らかである。スナッチやクリーンアンドジャークにおいて、中枢神経が複雑なコーディネーションとともに、速い筋収縮を命令するには、明らかに限界があるのである。

 

脳からの電気信号によって、筋収縮が始まるというのは常識であるが、筋肉にたどり着くまでに効率的なリレーが行われる。この電気信号が筋神経接合部に来ると、化学的・電気的な反応が起こり、筋収縮が発生する。1つの神経が脳とふくらはぎの筋肉を結んでいるのではない。シナプスを中継してリレーで伝わるのである。

 

ウェイトリフティングのようなスピードストレングス・スポーツにおいては、意識下にある限り、電気信号から化学的な反応を通して物理的な筋収縮を開始するのには、限界がある。意識的な動作は、単純に遅すぎるし、選手が発揮できる力も弱い。そういうわけで、挙上中に「考える」のは、現実的ではないのである。

 

スナッチやクリーンアンドジャークのような瞬発的な動作に関わる選手は、先天的な知恵である無意識の反応に頼らねばならないのである。そうすれば、これらの動作を効率的に行うことができるであろう。瞬間的に複雑な動作を制御するには、無意識下で行う方が優れているのだ。

 

ウェイトリフティングには多くの重要なテクニックが存在する。ビデオや写真から、何らかの分析や助言を行う時、人体の能力を考慮に入れる必要がある。

 

一体リフターは、コーチに指示された動作、複雑な動作パターン、中枢神経系の限界などを、あの一瞬のうちに認識できるのだろうか?

 

例えば、僧帽筋からバーベルに垂直方向の力を与える(シュラッグする)為に、上体はほぼ垂直にする必要があるが、国際レベルのコーチでさえ、「プルの頂点でシュラッグができていない。次は必ずシュラッグしなさい。」というのはなぜだろうか。この指示を守る為には、フルエクステンションの直後約100ミリ秒間にその動きをするように覚えていないといけないのである。

 

大会では、限界近い重量を扱う為、自分の動きを意識することが難しい。これは、選手にとって望ましいことではない。先述した、シュラッグラッグのタイミングがリフターにとってプラスになるにせよ、ならないにせよ、それ以前に意識することが出来ないのである。

 

別の例を考えよう。コーチ、あるいはコーチ達が、クリーンアンドジャークの立ちの時に大きな声で選手に指示をすることがある。選手は限界近い重量を胸に乗せて立とうとしているのである。この時、選手の中枢神経系は、パンク状態の電話交換機のように、様々な関節や筋肉の受容器から信号を受け取っているのである。コーチのこの行動は、動作の直前に体への制御レベルを下げろというN.A.Bernstein 氏の提言とは逆である。コーチたちは明らかに、試技中に「考える」ことを選手に望んでいるのである。「考える」ことには限界はないと考えているのである。

 

そのような状況下で声を出して指導をすることは、理想的ではない。もし、その時点で選手に動作パターンが身についていないとしたら、遠くから、ジャークを思い出させる為に声で指示をすることは、むしろ逆効果である。

 

選手やコーチは、教える為、習得する為に、また、テクニックを改善する為に、体の生理を学ぶ必要がある。体の生理についての理解が、練習の計画を立てる際の基礎になるべきなのである。

 

Arkady Vorobyev が主張の根拠として、「個人的な経験」という言葉を選んだのは最悪である。これは、例えば、2回のオリンピックチャンピオン、5回の世界チャンピオン、21回の世界記録更新者であり、M.D、Ph.Dであり、人気作家であり、ソ連の元コーチであり、戦争の英雄である人物が、その著書で、「思う」とか「知っている」というフレーズを多用するようなものである。

 

 

筋肉の弛緩

 

一見矛盾しているように聞こえるかもしれないが、ウェイトリフターは、限界重量を挙げる為に、筋肉の緊張レベルを高める必要があるが、一方で筋肉を弛緩させておく必要がある。ウェイトリフターはそれから、最も効率的な挙上を行うために、必要でない筋肉を十分弛緩させておかねばならない。

 

ウェイトリフティングにおいて不必要な筋肉の緊張は3種類に分けられる。

 


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1)姿勢を保つ為の緊張や握りの緊張

2)試合前や試合中の、心理的な興奮から来る全身の緊張

3)過剰なトレーニングによる緊張

 

スナッチやクリーンにおいて太腿や体幹の伸縮筋にほとんどの負荷がかかるということは常識である。しかし、バーをしっかり握ったり、背中をまっすぐに保つ、あるいは腰の辺りを少し反らせることも必要である。姿勢を保ったり、グリップをしっかりさせる為にどのくらいの意識や努力を払えばよいのだろうか。

 

筋肉を弛緩させることは、体の力を引き出すことと関係がある。重量が重くなればなるほど、また、より多くの筋肉、筋繊維が動員されればされるほど、筋肉の緊張の度合いが大きくなる。つまり、弛緩するべき筋肉に過剰な緊張を指示することになり、こういった不必要な緊張が余計な抵抗となって、筋収縮のスピードを殺し、疲労の訪れを早めてしまうのである。

 

グリップや体幹への注意は最小限に抑えるべきである。スタートポジションからフィニッシュまで、体やバーベルが最も効率よく動くように、垂直方向の力を最大にすることのみを考えるべきだ。

 

中枢神経の処理能力には限界がある。グリップにおける過剰な緊張や、背筋を伸ばそうとする為の過剰な緊張は、不必要な緊張であり、運動資源を無駄に消費して、最も重要なバーベル挙上という仕事を阻害してしまうのである。

 

 

体幹の姿勢

 

スナッチやクリーンにおいて、背中をまっすぐあるいは少し反らしておくことは、プラットフォームとバーベルの緊密な接続を保つ為に必要である。背中を丸めていると、脚が生み出す力の一部は、体幹のたわみによって分散されてしまうだろう。したがってバーベルに効率よく力を伝えることが出来ない。

 

しかし、垂直方向の力が、背中を締めることによって生まれるわけではない。背中の役割は、バーベルとプラットフォームとの間の強固なコネクションになることである。バーベルを実際に挙げる力となるのはプラットフォームに対しての力でなくてはならない。このプラットフォームに対する力で技術レベルが分かる。

 

背中を締めるのは、アイソメトリックな緊張である。背中をまっすぐにする為の筋肉は、スナッチやクリーンの際に、ファーストで傾いている上体を起こすのに使われているわけではない。したがって、背中の筋肉は、姿勢を作る為のもので、挙上の力自体を生み出すものではないと言える。

 

スナッチやクリーンアンドジャークのスタート姿勢で、首を少し後ろに傾けるのは賢明だといえるかもしれない。この動作により、自動的に背中の筋肉が緊張し、背骨をまっすぐに保つことが出来る。スタート姿勢を安定させるこの方法は、首を過度に傾けたり、下背部を過度に緊張させたり、胸を過度に張ったりすることに比べるとまだましである。こういった動作は余分な注意力や、不必要な努力が必要になる。

 

挙上中、背中を正しい姿勢に保つ為に必要なアイソメトリックな緊張は、究極的には、自分が背中を緊張させていることにすら気付かないのが望ましい。選手は無意識のうちにこれを効果的に行っているのである。

 

 

バーベルを握るということ

 

バーベルを握る為に、フックグリップという方法が用いられている。しかし、これが一番力の入る方法ではない、ということは常識である。普通の握り方のほうが力が入りやすい。だが、ウェイトリフティングにおいては、フックグリップのほうが好ましい。なぜなら、フックグリップのほうが、手首が曲がりにくいからである。

 

背中を正しい姿勢に保つ為のアイソメトリックな筋力は、バーベルを持つことに使う努力や注意が最小になるまでレベルアップさせる必要がある。例えば、ストラップを使ったほうが重い重量をあげることが出来るのは、グリップに気を使わなくて良いためである。

 

また、バーを握る時の手の筋肉の緊張は、特にバーが重い時、腕に伝わる傾向がある。つまり、バーを握るのに必要な筋肉以外も、無駄に緊張してしまうのである。その結果、スナッチの受けにおける弛緩から進展への滑らかな切り替えが、内部の抵抗によって阻害されてしまうのである。

 


タンポンで置く場所

スナッチやクリーンアンドジャークの前に、バーを握った後ぐるぐるとバーを回転させる選手がよく見られるが、これは、緊張が腕まで及ばないようにしているのである。これは、肘関節以下の緊張を局所化する一つの方法である。ソ連の選手や今のロシアの選手はこうした儀式をよくやっていた。

 

グリップに過度の緊張が及ぶこのような状況は、ジャークで、バーが胸の上にある時にも関連がある。バーが胸にあるときには、バーを強く握ってはいけない。滑らかに腕を伸ばす為に、手を開くか、意識的に手を緩める必要がある。

 

手の緊張が腕に伝わってしまうと、三頭筋や二頭筋などの拮抗筋を、一瞬にせよ過度に緊張させてしまう危険がある。三頭筋を使って腕を決めようとしても、二頭筋など、腕の進展筋がそれを邪魔してしまうのである。この状況で腕を完全に伸ばすのは可能であるが、「決める」のは難しい。

 

 

筋肉のコーディネーションと弛緩

 

スナッチとクリーンアンドジャークにおいて、筋肉の弛緩と緊張の素早い切り替えが起こっていることは知っておくべきである。緊張と弛緩のこの素早い切り替えは、上手くなるために必要不可欠な要素である。試合直前には、心理的興奮から来る一般的な緊張によって、多くの筋肉(特に拮抗筋)に不必要な緊張が発生してしまう。これは、パワーリフティングの選手によく見られるが、ウェイトリフターの技術に悪影響を与えてしまう。

 

スナッチやクリーン時のEMG分析によれば、トップの選手と下位の選手とでは筋肉のコーディネーションが全く違うという。

 

筋活動の効率は、実際に発揮されるトルクに依存する。したがって、動作の中で拮抗筋の影響が大きいと、効率を落とすと言われている。トップ選手のEMG分析を見ると、股関節進展筋と膝関節進展筋の爆発的な筋活動が切り替わっている。膝の進展筋が収縮する時、膝の屈曲筋は実際に弛緩状態にあるのだ。逆もまた同じである。

 

下位の選手の典型例では、筋肉の弛緩・緊張の切り替えが見られない。下位の選手の筋活動分析では、股関節進展筋と膝関節進展筋の持続的な緊張が見られる。つまり、例えばプルの時に、拮抗関係にある筋肉が、ともに活発な状態にあるのだ。Verkhoshansky は、筋肉とその拮抗筋との間のこのような急激な切り替えが他のスポーツでも見られるという。優れた選手の単純な動作から得られた医学的なデータからも、余計な筋肉活動がないことを示している。

 

筋肉間のコーディネーションとウェイトリフティングのトレーニング

 

スナッチやクリーンアンドジャークにおける高い技術は、動作の反復による継続的に洗練した結果得られるものである。ウェイトリフティングにおける究極の目的は、大会で限界重量を完璧なフォームで挙げられる様になることである。これは、より重い重量をより低い位置で、より遅いバーベルスピード、より速い体の動きとともに挙げることに関連がある。または、練習で培われるものであるとも言える。しかし、頻繁にトレーニングをしなければ、そのような技術は身につかない。

 

Abajiev は、体重120-130kgの選手が100-110kgを挙げる一方で、体重56kg、15歳のネイム・スレイマノグルが160kg挙げる事実に対して、大量の反復練習による高度な筋肉間コーディネーションの結果であると言及している。彼が言うには、協力筋を最適な状態で弛緩させたまま挙上に使う筋肉で大きな力を出せる能力が大きな違いを生むという。筋肉量はスレイマノグルよりずっと多いが、筋肉間コーディネーションに違いがあるのだ。そのため、彼らの動きは"重く"、エネルギーが無駄に使われ、効率が落ちるのである。

 

意識的な弛緩

 

手の握りから来る緊張であれ、姿勢維持から来るものであれ、心理的興奮からのものであれ、ウェイトリフティングにおいて、不必要な緊張を避けることの妥当性は、体の活動要求と生理学的な容量との関係を考えれば明らかである。「緊張から弛緩への急激な切替は、(例えばセカンドから受けへの動作の様に)単に動作が変化しているだけではないのである。」スナッチやクリーンでのセカンドでは、筋肉がとりわけ急速に収縮することが求められるが、それでも、他の状態へ素早く切り替わることが出来るのである。

 

実際は微妙な効果ではあるが、心理的興奮から来る"一般的な"緊張は、手の握りから来る緊張や、姿勢維持から来る緊張と同様に、選手の正味の出力に悪影響を及ぼす。また、主要筋群における緊張・弛緩の切替は非常に重要であるが、これにも悪影響を与える。

 


意識的に筋肉を弛緩させることのできる能力は、高い技術を身につけるためには、非常に大切である。だが、ウェイトリフティングにおける緊張を考えるとこれは簡単ではない。緊張の度合いが強く、弛緩するのは難しい。リガード、バルダニヤン、ザハレビッチといった伝説的な選手は、世界記録に挑戦しようという時、半分寝ているかのように見える。それとは対照的に、パワーリフターの選手が、同じような状況で叫び声を上げ、真っ赤になり、興奮して拳を握り締めるシーンは非常に一般的である。パワーリフティングからウェイトリフティングへの転向が上手くいかないのは、この大きな違いが原因のひとつになっているにちがいない。

 

意識するにせよしないにせよ、不必要な緊張を伴ってしまう"固い"リフターは、最大重量を挙げる為に必要な、連続的で滑らかな動作を出来そうにない。それでなくても、選手が発揮できる正味の出力は不必要な緊張によって低下してしまうだろう。したがって、"固い選手の"ベスト記録は、本来の能力よりも低くなる可能性が強い。

 

"強い"緊張とストレングストレーニング

 

筋力はウェイトリフティングにおいて重要な要素であるが、スクワット、プル、プレスなどで高負荷のトレーニングに偏重してしまうと、スナッチやクリーンアンドジャークに悪影響を与えうる。筋収縮の速度や動作のスピードはウェイトリフターにとって必須のスキルであり、頻繁に鍛える必要がある。

 

例えば、"筋肉が強く緊張すると、動作速度を落としてしまう可能性がある。なぜなら、強く緊張すると弛緩しにくくなるからだ"(V.L.Federov,1958,Sokolov による引用)"ある研究結果によると、最も強い緊張を示したのは、ストレングストレーニングばかり行っている選手だった"。従って、緊張と弛緩を上手く使い分ける能力は、スキルだけでなく、トレーニングの内容にも影響を与えるのである。

 

 

筋肉の弛緩とメカニズム

 

筋肉の弛緩と、不必要な緊張の除外という概念は瞬発力を必要とする他のスポーツにおいても重要な役割を持っている。こういった生理学的な弛緩の基礎は一般的な常識なのである。

 

陸上競技においては、スプリント競技における筋弛緩の重要性は、常識になっている。"スピードを高める一番の秘訣は弛緩だ!そうすることでスピードを高め、拮抗筋を黙らせ、筋肉の切り替えを速くし、より少ないエネルギーでより大きな力を望む方向へ出すことができる。全てのドリル、ランにおいて、弛緩は第2の天性にならねばならない。弛緩している時、十分に力を出していないと感じるかもしれない(大きな試合で多くの選手を困らせる感覚)、しかし、覚えておいてください、大切なのは正味の出力である!正味の出力とは、望む方向への出力から、拮抗筋による力を引いた力のことである。"

 

"体の中の電子回路をリセットする為に"挙上の前に全身を意識的に弛緩することが必要である。例えば、脳から筋肉へと伝えられる筋収縮の信号は、電話に似ていて、何人かの交換手を経て、かけたい相手につながらねばならない。グリップや姿勢維持の為の不必要な緊張、過剰な緊張は、限りのある電子回路を持つ体内で、電話をかけようとしている"人"がたくさんいるようなものである。

 

スナッチやクリーンアンドジャーク直前の不必要な緊張は、このような電気化学によって、動作効率に悪影響を与えうる。

 

例えば、エンジンの馬力に関わらず、アクセル全開にしても、エアコンが弱くなることはないし、0マイルから60マイルまで急速に速度を上げても、ラジオや室内灯は点いたままである。不必要な緊張が正味の出力を下げるように、車の"アクセサリー"はエンジンパワーの一部を奪う。"弛緩"したウェイトリフターは、不必要な"アクセサリー"を取り除き、ウェイトリフティングに使う筋肉から最も大きな出力を出すことが出来、最も大きな動作速度を発揮できるのである。

 

マッサージや振動マッサージのように、弛緩を促進する為のエクササイズがあるが、ウェイトリフターは、究極的には、自分の意思によって弛緩出来るようにならねばならない。これは、試合で高重量を扱う際に最も重要な要素となるのである。

 



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